2026年6月15日(東京)
Solutions for Our Climate(SFOC)は、OECD多国籍企業行動指針に基づき、日本の国別連絡窓口(National Contact Point、NCP)に対し、モザンビークLNGプロジェクトに関連する重大な人権リスクへの対応を怠ったとして、日本の金融機関及び保険機関に対する正式な問題提起を行いました。
本問題提起は、三井住友銀行(SMBC)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほ銀行、国際協力銀行(JBIC)、および日本貿易保険(NEXI)の日本の5つの機関を対象とし、同プロジェクトへの融資および保険引受による関与について問題を提起しています。特にJBICは、日本の主要な公的金融機関として、累計で約35億米ドルを同プロジェクトに投じています。[1], [2] また、NEXIは、銀行による20億米ドル相当の協調融資に貿易付保をすることを公表しています。[3]
今回の問題提起は、化石燃料への資金提供に対する監視が強まる中、金融機関に対して国際的な人権基準の遵守を求める声が高まっている状況下で提出されました。
モザンビークLNG開発は、アフリカのLNG開発としてはこれまでで最大規模の民間投資と報じられています。[4] このプロジェクトはTotalEnergiesが主導しており、モザンビーク北部カーボ・デルガード州における深刻な人権侵害との関連が指摘されています。具体的には、民間人に影響を及ぼす大規模な暴力、プロジェクト関連施設における不当拘束や虐待の疑い、さらに十分な補償がないまま移転を余儀なくされたコミュニティの未解決の苦情などが含まれます。[5] 2021年には、同地域で発生した暴力的襲撃を受け、TotalEnergiesは不可抗力(フォース・マジュール)を宣言しましたが、2025年11月にはこれを解除する決定を下し、被提起企業もこれに同調しました。[6]
SFOCは、紛争の激化や人権侵害の証拠が蓄積しているにもかかわらず、被提起企業が十分かつ独立した人権デューデリジェンスや、被害の防止・軽減に向けた取組みを行わないまま、同プロジェクトへの支援を継続したと主張しています。
本問題提起では、金融機関に対し早急に以下を実施するよう求めています:
モザンビークLNGプロジェクトに関連する人権侵害の疑いについて、独立した調査を支持し、また実施すること
プロジェクト関連の活動によって被害を受けた、または移転を余儀なくされたコミュニティに対し、実効性のある救済措置を確保すること
本問題提起は主に人権問題に焦点を当てていますが、同時に本プロジェクトがもたらす大量の温室効果ガス排出についても懸念を示しており、それは世界および日本の気候目標のいずれとも整合していません。
SFOCによる本問題提起は、6月5日にJustiça Ambiental(JA!)およびFriends of the Earth Japan(FoE Japan)が、同プロジェクトの出資者である三井物産およびJOGMECに対して提出した関連問題提起に続くものであり、モザンビークLNG開発に対する国際的な監視の高まりを示しています。[7]
OECD NCP手続は、提起者と被提起企業との対話および調停の場を提供するものであり、責任ある企業行動に関する国際基準に沿って各機関の実務をどのように改善すべきかについての提言が示される可能性があります。被提起企業にとって、この手続への関与を怠ったり、最終的な提言に対応しなかった場合には、深刻なレピュテーションリスクに直面するほか、ESG重視の投資ポートフォリオからの除外、さらには数十億ドル規模のプロジェクト再開に向けた資金提供に関して国際的なパートナーからの圧力が高まる可能性があります。
JA!のガス・キャンペーンのナショナル・コーディネーターKete Fumoは、「モザンビークLNGプロジェクトは、土地の収奪、生計手段へのアクセス制限、そして紛争の影響を受けた地域における長期かつ複雑な移転プロセスを通じて、すでに数千人の生活に影響を及ぼしてきました。この地域では、複数の人権侵害の疑いが広く記録されています。
また、本プロジェクトは、アフリカにおいて気候変動の影響を特に受けやすい国の一つにおける潜在的な「カーボン・ボム」ともみなされており、異常気象の発生頻度および深刻度が増している現在において、重大な懸念を引き起こしています。
これらの事実を踏まえると、同プロジェクトへの資金供給を継続することは、影響を受けるコミュニティの権利と福祉を軽視している深刻な姿勢を示すものです。」と述べています。
SFOC リーガルフェロー 弁護士 小出 薫は、「モザンビークでのガス田開発に関連して、現地の人の生活や生業を営む場所、ひいては暴力により命を奪うという深刻な人権侵害が浮上しています。また、気候危機の悪化や生態系の破壊にも深刻な影響をもたらします。
モザンビークは日本からは物理的に離れた場所にありますが、そこのガス田で採掘されたLNGの一部は日本に運ばれ、消費されることが予定されています。その意味で、日本に暮らす人にとって非常に身近で、無視できない問題です。本件は、「日本でのエネルギー消費のために、現地の人の生活や環境が犠牲となっても良いのか?」という問題を投げかけるものです。」と述べています。
国連ビジネスと人権作業部会の議長であるピチャモン・ヨーファントン博士は次のように述べています。「金融機関に求められる人権についての責任に目を向けると、国連指導原則(UNGPs)や機関投資家に関する作業部会の議論が明確に示している通り、投資家や貸し手は単なる中立的な資本の供給者ではありません。人権侵害を前に沈黙することは共犯に他なりません。日本の選択はカーボ・デルガードを超えて影響を及ぼし、ビジネスと人権の分野におけるグローバルリーダーとしての評価にも大きく関わることになります。」
以上 。
出所
国際協力銀行(JBIC)「モザンビークLNGプロジェクト(ロブマ沖合エリア1鉱区)に対するプロジェクトファイナンス」2020年7月16日、https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2020/0716-013514.html。
国際協力銀行(JBIC)「モザンビークLNGプロジェクト(ロブマ沖合エリア1鉱区)に対する開発資金を融資」2020年2月16日、https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2020/0216-014303.html。
株式会社日本貿易保険(NEXI)「モザンビーク共和国/モザンビークLNG(ロブマ・オフショア・エリア1鉱区)プロジェクト(融資保険の引受)」2020年7月16日、https://www.nexi.go.jp/topics/newsrelease/2020063002.html。
フランス24「モザンビークの大規模ガスプロジェクト、5年の中断を経て再開」2026年1月29日、https://www.france24.com/en/live-news/20260129-huge-mozambique-gas-project-restarts-after-five-year-pause。
国際環境NGO FoE Japan「モザンビーク・モザンビークLNGとは?」2024年8月27日、https://foejapan.org/issue/20240827/20016/。
フランス24「TotalEnergies、200億ドル規模のモザンビーク・ガスプロジェクト再開を承認」2025年10月25日、https://www.france24.com/en/live-news/20251025-totalenergies-approves-restart-of-20-bn-mozambique-gas-project。
国際環境NGO FoE Japan「深刻な人権侵害のつづくモザンビークLNG事業ー日企業のOECD指針違反について日英政府窓口に申立てを提出」2026年6月5日、https://foejapan.org/issue/20260605/29875/ 。
SFOC(Solutions for Our Climate)について
SFOC(Solutions for Our Climate)は、地球平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるというパリ協定の目標のもと、温室効果ガスの最も効果的な削減を目指して、2016年に韓国で設立された気候変動対策を専門とする非営利団体です。
「世界的な脱化石燃料と再生可能エネルギーへの移行を加速させる」というミッションのもと、私たちは気候危機への対応において最も緊急性の高い課題を継続的に特定し、その取り組みを拡大していくことで、多様なステークホルダーと連携しながら、実質的な変化を促しています。
プレスリリースに関するご質問、およびその他お問い合わせに関しましては以下までご連絡ください。
手機:070-4718-8234
Email:andrea.leung@forourclimate.org
担当:リョン アンドレア
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